まあ、ねえ。
“着手金が要りません。
私達にお任せください。”

そう謳っている弁護士事務所が信用を得るには、どんな小さな相談事でも軽くあしらわずに、誠心誠意の対応をすることなのかなと。

俺のこれに対して、どれだけの熱意があったのかは知らないけどね。



俺んちに郵便局から連絡がきた。

『俺様宛に郵便局留めの郵便物が届いております。差出人は桃瀬泰広様(代表弁護士の個人名)です。本人確認できる身分証を持参の上、局までお越しください。』的なこと。


俺の家に直接弁護士事務所からの内容証明郵便を送りつけて俺の家族まで巻き込まないように、との配慮だと思った。
温情のある弁護士だと感じた。が。


はいはい。いよいよ詰んだ。
弁護士会照会恐るべし。

郵便局で免許証を提出し、その通知書を受け取る。
内容の要約はこう。
  • 当職らはけんじの代理人弁護士だよ
  • 俺氏は真由氏が既婚者であると知りながらセックスしたよね
  • この件について、慰謝料として金150万円を請求するぞ
  • 不服であれば訴訟も視野に入れといてね

最後の文言はまあ、よくある脅し文句なのかな。訴訟も辞さないという圧力をかけて、すんなり話がまとまればラッキー。と。


俺さ、諸事情あって俺が原告の民事訴訟を起こしたことが2回ある。
とりあえず、その時にお世話になった弁護士さんに相談に行ったけどね。

不倫セックスがばれちゃったら慰謝料を払うのは当然だと。
こちらに弁護士費用払って、更に慰謝料払うとか無駄でないかい?と言われた。

ただ、俺くんの話をきけば150万円は高すぎるし、求償権(真由にも旦那に対して慰謝料の支払いをする責任があるということ)を考えたら、50万~75万くらいを払うのが妥当じゃないの?とヒントをいただいた。

あとは自分で減額交渉しなよって。
もっと高額な慰謝料請求や賠償問題なら相談に乗るけど…。と。

ここも金。

こういうトラブルをいくつも見てきた弁護士に対して、俺がどこまで渡り合えるのか。

弁護士からの「通知書」に対し、
俺からの「回答書」という形で何度か文通をした。


あてにならないネットの情報と俺の文章能力だけが頼りだったね。


不貞行為の事実は認める。でも慰謝料の額に不満がある。求償権も行使する。
弁護士にも相談したが、30万円ほど払うのが妥当だと言われた。というようなことを書いた。

最初にドカンと減額交渉するのって値切りの基本みたいなところよね。

だけど弁護士も半額以下のタイムセールスみたいなことに応じるはずがない。

「75万円で勘弁してやるよ。」とまた局留めの手紙がきた。

75万って相談した弁護士さんが言ってた上限みたいなところ。
もう少し減額できるはず。
今度は情に訴えかける内容で返信。 

「50万。50万で手を打たないと訴訟するよ。」と届いた。

これ以上食い下がると本当に提訴されるかもな、と思ったので、ここで減額交渉は終了。
50万円を支払う同意書に捺印した。


住所のわからない相手でも慰謝料を取ることは可能なんだよ、という捨て身のルポでこの話も終了。


慰謝料請求する側も、請求された側も
これから請求される人も。
この記事が少しでも役に立てば。


けんじの雇った弁護士から留守電が入った数日後、真由から様子を伺う連絡がきた。

留守電があったことを伝え、その後の互いの動きを話した。


俺は以前から聞いていた話だが、真由には俺以外にも複数の浮気相手がいた。


そのうちのひとりの男は既婚で、何かの会社の経営者。
真由本人は俺に、その男とはもう離れたいんだと愚痴をこぼしていたけど。
メールやライン、みんな読まれて俺以外の男のことも全てけんじにバレてるみたい。

真由のご主人、けんじとも面識のある男らしいことを言っていた。


「旦那がね、その人に会ったの。
今までのこと、奥さんに知られたくなければ誠意を見せろって言ったらしいの。」


すぐに100万円だかを払ったらしいその男。
「たったこれだけか?」というような話をけんじは相手の男にしているらしい。
そこまでは真由から聞いた。
今現在、どうなったのか俺は知らない。

きっと金なのよ。けんじは。
そういう尻の軽い嫁とは即離婚、という訳ではない。
嫁の素行の悪さに精神的にかなりのダメージを喰らっているはずだろうけれど、とりあえず金。



話を俺に戻します。


弁護士という職業は、国からすごい特権を与えられているのです。
弁護士法なる法律で「弁護士会照会」という制度がある。

各都道府県の弁護士会から認められた案件に対して、関係者の個人情報を独自に入手できる。

俺で言えば、俺の電話番号を携帯会社に問い合わせ、契約者の住所、氏名を聞き出すことができる特権。


まずは弁護士会での会議のようなものに話を持っていき、多数決かなにかで「んー、俺くんの電話番号から住所探ってもいいよ」のゴーサインが出ればいい。


お願いだから会議で否決されてよと。
たった2回セックスしただけよ、俺。




タイトルね。一応続きもんだから、わかりやすく“と”を重ねている。
かえってわかりにくい。
どれだけ重ねたら良いの?わたし…。と俺も困ってきた。


やめるにやめられないんだよ。ここまで来たら、ね。
そういうの、不倫といっしょ(うそ)。


不倫という関係に本命もへったくれもありゃしないけれどね、わかりやすく言い表すなら本命。そんな女が俺には居る。

飛行機に乗って会いに行く。
俺ってバカだ、と思うけど。

『ANA123便ホニャララ行きにご搭乗の皆様、この飛行機はドアが閉まりましたら携帯電話等の電波を発する機器の使用を禁止しております。
ドアが閉まりましたら電波を発する機器の電源をお切り頂くか、機内モードなどの電波を発しない設定に切り替えろよバカヤロー。』



機内モードにして本を読んだり、Googleマップを見たりしてる。機内モードでもGPSは拾うのよな。あれ。
自分が今どのへんを飛んでいるのかがわかるから面白い。

けどさ、Googleマップのタイムラインとかロケーション履歴ってやつ。

何時にどこへ向かい、何時までそこに滞在したかが一目でわかる。

自宅を出た時間、出発空港に着いた時間、向こうの空港に到着した時間、そこからの移動手段と移動距離。入ったホテルの住所や緯度経度に滞在時間。

俺は独身だから、何の問題もないけど。
既婚の皆様気をつけてね。
設定をOFFにしなきゃね。



国内線、約1時間のフライト。
あっという間に着陸。

『ご搭乗の皆様、この飛行機は定刻通りホニャララ空港に着陸いたしました。この先電波を発する機器もご使用になれますが、周りに迷惑かけんなよー。』

機内モードをOFFにする。

“着信お知らせ”
“留守番電話にメッセージがあります”
“ラインの通知”
“メールの受信”

OFFにした途端、一挙にくる。


携帯電話からの着信があった。
けんじ、ではない。
登録していない電話番号だった。

誰なのか読めちゃうね。
一応留守電きいとこ。
到着通路を歩きながら再生。


『桃瀬法律事務所の男前弁護士の佐藤と申します。真由様という女性のことで少しお伺いしたいことがございますので、ご連絡いただきますよう、よろしくお願いいたします。』

な。

これから女と一泊って時に。
おまえどこかから見てるの?というタイミングだった。

まあ、シカトだわな。
どのみち電話番号しかわからないんだし。



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