また少し俺のこと話しておかないといけないのかな。
俺は生まれ育った街に今もいる。
実家を建て直し、子供の頃と同じ場所にいる。
長男なんだな。
周りには先輩や後輩も暮らしている。
当たり前だけど、地元に残った同級生も。
で、何度も話したようにその彼女のご主人も同級生。
彼女の家が建つその通りには数名の同級生の実家がある。
俺はよくある地元の繋がりみたいなのを大事にはしないタイプ。
できることなら誰も俺のことを知らない大都会で誰だかわかんない隣人と暮らしたかったと今でも思う。
友達少ないし、人のことにあんまり興味ないし、構われたくはない。
でも、見てるやつは見てるのよね。
ある日別の同級生から連絡がきた。
「おまえさ、あいつの嫁となんかあるの?」
「誰なのそれ。
ご主人くんとも縁が薄いのに奥さんのこと俺が知ってるわけがないよね。」
「あいつの嫁バカだからいろんな男つかまえて遊んでるらしいけど、最近子供たちも薄々気付いてるらしいのよ。ママが夜中に居なくなること。」
「へー、そうなの。」
「あいつそろそろ赴任期間おわるらしいしね。戻ったら離婚するとか話してたぞ。
相手がおまえじゃないならいいけどさ、もしそうだったら大変なことだぞ。」
「だから知らないって。」
俺が思うにきっとこんなかんじだ。
彼女の子供が母親の異変に気付く。
それをご主人に伝える。
ご主人から近所の同級生たちに奥様の動きを監視するように伝言がある。
で、俺と一緒に居るところ見たんだと。誰かが。
探偵もびっくりよね。
商売上がったりだ。
恐ろしいね、地元の繋がり。
だから嫌なの。
俺がどこの誰とセックスしようがね、きみたちは知らなくてもいいこと。
そのことを彼女に話した。
「確かにもう数ヶ月で戻るって話してたけど、すごく普通だったよ。怪しんでる様子なかった。」
離婚うんぬんについても触れてみた。
「うちに限って離婚はありえないよ。
だって、お互いに感謝してるし、生活の面でもお互い信頼感はある。主人がここに居ない数年間、子供たちやこの家を守ってきたのは私なんだから。」と、別段慌てる様子もなかった。
「主人が帰ってきたら俺くんと会える回数少なくなるけど、友達と飲みに行くとか言って上手くやるから。」
まだおかわりしたいみたい。
でも俺もういいかな。
怪しまれているなら早々に切り上げたほうがいいし、もう俺おなかいっぱい。