2019年11月

 

「俺くん元気してる?久しぶり。」

とある既婚女性から久しぶりにラインがきた。会わなくなってもう7年だか8年。
俺んちの離婚の原因になってしまった彼女。

会うことはないけれど、たまに連絡はする。
相手にとっても俺にとっても害はないし。

「久しぶり。最近どう?」


「元気だよ。俺くんは楽しく過ごせてる?」


“楽しく過ごせてる?”そう聞かれたら、楽しいことがあっても、“ない”と答える俺。
“あの頃がいちばん楽しかった”ふうを装う。

俺のことを思い出して連絡をくれているんだ。ほかの女性を匂わせるような発言だけは避けたい。世の中どんなことが起きるかわからないし、という下心。


「楽しいことなんてべつにないさ。」
その後あっちこっちであれしてますけど。


「楽しいことってないよね…。
長男くんはもう大学卒業した?」


「今大学4年だな。次男はもう働いてるよ。
娘さんは?」


「この近くで就職して一人暮らししてる。


「そっか。あの頃は小学生だったよね。早いね。」


なんだかよくわからない会話が続いた。
埒があかないからとりあえず口火を切った。


「また会いたいな。」


「うちも俺くんに会いたいよ。」

彼女にそんな気があるのかないのかはわからない。社交辞令的に返事をしたのかも知れない。が、嬉しかった。
俺ももう会うことはない女性なんだと思っているし。

ここでラインは一旦おわった。


明け方頃に再びラインがきていた。

「あの、俺くん。
ちょっと相談があって…。」

俺がそれに気付いたのは朝の9時頃。
よしきた。もじもじしちゃって。会いたいんでしょ?俺に。



「どうした?なんでも話して。」


数時間遅れで返信。
しばらくするとまた彼女からラインがきた。


「ううん、もう大丈夫。」


あれ?会わなくていいの?大丈夫なの?


「大丈夫って…。なんでも話せよ。」



「あのね…。」



「うん。」


「弟のことで相談っていうか…。お願いしたいことがあったから。でももう大丈夫になったから。」


「そっか。弟さん、自営業だったよね。
いろいろあるよね。」


そう返信をした。
既読だけがついた。



この物語を要約しよう。


たぶんですけど、彼女の弟氏は資金繰りに困ったのだと思う。いくらかのまとまった金銭がすぐさま必要だと顔が青ざめることは俺もよくある。
そこで姉氏に頼った。
「お姉ちゃん金かして。」

「ちょっとまってね。」

で、俺を思い出した。
なるほどなるほど。俺=金蔓

なるほど。



 


 

 1ビットコインが103万円くらいで取引されている頃にですね、数万円ぶんのビットコインを買ったんですよね。
その直後に120万円くらいに値上がりしたのさ。でも俺の持っているビットコインの量では収益なんてたかが数千円。

なのでもっと値上がりを期待しています。
しかしながら、今現在の1ビットコインの価値は77万円~78万円という暴落ぶりで俺のお金がどうなってるの。

あなたも冬のボーナスで一攫千金どうぞ。

冬物のなんか買お。

この春に革ジャン買ったのさ。
A-2ってやつ。バズリクソンズのA-2。
20万円くらいするやつを破格の値段で手に入れた。買い物上手だよ。
昔から言うもんね、買い物上手は床上手。
あなたの地方では言いませんか?


もうすぐ冬がくる。

真冬に豪雪地帯へ行った。スキーやスノーボードみたいな趣味もない俺が、ただ女性に会いに。

「実家に帰省するタイミングで俺くんに会いたい。」


“毎年2メートルくらい積もる”ところ。
川端いわく、国境の長いトンネルを抜けるとあるんだよ。本気の雪国が。

真冬に会いに行ったのは二回ほど。

初年はプライベートで乗る車のスタッドレスタイヤを買ってなくて、
“7人乗りアルファード・スタッドレス装備”
をジャパンレンタカーで借りて、“1人乗りアルファード”という不経済な仕様で雪国入り。
ちっとも雪なんか積もってなくてすごくびっくり。


翌年の冬にはマイスタッドレスを用意して、マイカーで雪国入り。
ちっとも雪なんて積もってなくてすごくすごくびっくり。
温暖化だよ。知らんけど。

綺麗な女性なのよ、ほんと。
贔屓目なしに綺麗なひと。肌が白く、河合その子が綺麗なまま年齢を重ねたような。

会わなくなってもう3年くらいは経つけれど、まだラインくれるし、送れば返ってくる。


そんな彼女がいつかの帰省の時に写真を送ってくれた。

「今年も雪は少なめかな。でも俺くんが来てくれたときにこんな景色見せたかったな。」と。

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「またいつか会えるのを楽しみにしてる。」
何度もそう言ってくれる。


「私ってこんなに未練がましい女だったんだと自分に驚いているよ。」


とか言われるほどいい男でもないんだけど。


 



たまにね、喫茶店にくるの。
今風の“カフェ”ではなくて、昔ながらの“純喫茶”。なんだかよくわからないピアノとバイオリンのBGMが流れる心地よい空間。
どう聴いても決してロックでも演歌でもなくてジャンルもよくわからないんですけど、とにかく心地よいのです。

俺がガキの頃からあるこの喫茶店。
家族経営だと思われます。

別れた奥さんとも若い頃にたまに来た。仕事サボって行く所がない時もここで時間を潰したし、GREEだかなんだかで釣った人妻さんともここで待ち合わせたこともあったな。離婚の騒動の時もここで『佐藤くん』と話した。

と、いろんな思い出があるこの喫茶店。
今日は仕事終わりにちょっと寄った。


俺が20代の頃には20代に見える女性店員がいたんだ。かわいいこ。声をかけたいと思っていたが、なんか勇気がでなかったんだ。

俺が30代の頃には30代に見える女性店員がいた。愛想のいい綺麗な人。こんな静かなところでナンパする根性ないわ喫茶店。

俺が40代になった今、40代に見える女性店員がいる。にこやかな笑顔と巨尻がたまらない、七夕の時期には浴衣で仕事をするフェロモン多めの女性店員。

たぶんですけど、たぶんですけど同じ女性なんだな。ここの娘さんなんだろな。
人の顔を覚える才能が全くない俺。
同一人物ならば、いいかんじに熟しております女性店員。

人の奥様でも行き遅れでも出戻りでもいいんです。とりあえずこの女性と仲良くなれないかと日々思案中でございます。

喫茶店の店員さんと仲良くなる方法を誰か教えてください。


若い頃に歯科助手のお姉さんをその場でナンパし、撃沈。
そのままその歯医者に通うことを諦めたトラウマの持ち主なんです。怖いんです。

子供が入院した時の病院の看護師さんを病院でナンパし、撃沈。
それが奥さんの耳に入って険悪なかんじになったトラウマの持ち主なんです。怖いんです。

馴染みの店を失う可能性を考えると行動に移せないでいます。



さて。
俺の心の内を叫んだところで帰ります。
コーヒーどうもごちそうさま。


はい、帰宅しましてこの記事の続きを書きますよ、というか書きかけて数時間放置して日付は既に変わっております。
なので寝ます。

毎度毎度どうでもいい情報を垂れ流してる俺が大好き。








何年か前の秋か冬だったのかな。


「川崎まで来ることできる?
俺、行きたい場所ある。」


「川崎よくわかんないけど行くよ。こないだ俺くんと横浜で会ったし、それよか近いんじゃない?」


「ありがとう。川崎でホテル予約するね。」


俺は関東在住ではないからして、川崎の街など予備知識はほぼゼロ。

んでも社会科が得意だった俺は、そこには大規模な工業地帯があることだけは知っていたの。

とりあえず駅前のシティホテルを予約した。




「いつか俺の地元においでよ。なんもないけど、見せたい景色あるし。」

叶わないと知りつつ、そういう未来の話をしてみたこともある。
既婚女性と俺。叶えようとすることに無理がある。




約束の当日、朝の9時頃に待ち合わせ、チェックインの時間まで居酒屋で過ごした。

「11時だったと思うのよ、チェックイン。」


「時間はちょうどいいよね。私、俺くんと会うときしかお酒飲まないの。」


「なんで?」


「そうするとコンビニでお酒見るだけで俺くんのこと思い出せるじゃん。」


嬉しいよね。
『パブロフの犬』的に俺を思い出して不埒な気分に浸ろうとしてくれて。


いつもそうだった。
まずは居酒屋。
その後、チェックイン。


ほろ酔いの彼女と一通りの行為を済ませた。

あれよね、清楚な雰囲気の女性が酒の勢いで挑むセックスってけっこうすごい。


いつもそうだった。
2名宿泊の予約をして、泊まらずにご主人が帰宅する前には家にたどり着くように帰す。


日没の時間がはやい季節を狙った、川崎。



「そろそろ行こっか。」

「うん…。」

急に寂しそうな顔をして、俺の腕にしがみつく。

それが演技なのか、本当の姿なのかはどうでもいい。とにかく『不倫してます』気分は最高潮だった。




「まだ少し時間あるよね?」





駅前からずっと一本道だったと思う。
土地勘のない俺がナビなしでたどり着けた。


「この展望台のぼろっか。夜景見たい。」


『川崎ナンチャラー』という工業地帯を見下ろすことができる場所。


「綺麗だねー!
俺くんとの場所がまたひとつ増えた。」


「いつか話してたよね、俺んちの方にもこんな景色あるの。工場の夜景がみえるとこ。一緒に見たいなって。


叶わないから叶えにきた。
俺の住むここと似た景色を二人で眺めること。


「でもすごいよね、ここ。
川崎の工業地帯だけじゃなくて都内の夜景もすごく綺麗に見えるし。俺んちあんなビルないわ。」


「あっち新宿だよね。」


「わかる?」


「わかんないけど、あんなに高層ビルあるの新宿でしょー。」





「…俺くんと夜景見ることできてよかった。」


それきり彼女は話さなくなった。
いよいよ本当に帰る時間が迫ってきた。


来た道を駅まで戻る。

「ここでいい。」

そう言われ、車を路肩に寄せた。
ドアを開ける彼女を引き留めてキスをした。


姿が見えなくなるまでそこにいた。
彼女は振り返ることなく、帰路についた。




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で、これは俺が住む地方の工業地帯。
次もそんな話をしよう。




『ほにゃ県らら市なんとか町072番地』

俺はその女性の家の住所を知っている。
彼女も俺の住所を知っている。
俺のことを信用してくれているからこそ、だと思う。

なかなか会えない距離に住んでいるからこその楽しさというのか、会えないことを楽しむにはどうすればいいのか考えた結果がこれ。

たまに宅配便が届く。
彼女が住む街で加工された食品。
俺も何かを送る。この土地でしか買えないへんてこな食い物だったり、チープな雑貨だったり。

楽しいよね。日本人の半分は『金ちゃんヌードル』を知らないんだよ。

そこに住む人に『金ちゃんヌードル』を送って食ってもらうとかって遊び。
「おまえこんなの食ったことないでしょ?」って。そういうのを人の奥様とやってる。





「私んちは少し高いところにあるから大丈夫だったけど、近所の川の堤防が決壊しちゃって大変なことになってるの。子供の同級生の家が浸水してるし、流された家もあって本当にひどい。


『被災地』と呼ばれるようになってしまった彼女の住むところ。
テレビや新聞、ネットで連日そんな情報が飛びかっていた。
まさに俺が金ちゃんヌードルを送る土地の名前がテレビで連呼され、ヘリコプターから決壊や氾濫の様子が映されていた。



“お前んち無事でよかったね。”とか気軽に言えるほどの距離感でもない。
毎日の生活の場所がめちゃくちゃになっているって俺には経験がなくて、どう声をかけていいのかわからない。


「仮設住宅ができるんだよー。そういうの震災以来なんだけどね。」

どこか飄々とそう言っていた。 

「こうなったらあとは良くなるしかないんだよ。」って。

強いなと思えた。

ボランティアの募集もしている。
行ってみようかな、と少し考えた。
でも俺の場合、動機が不純すぎてやめた。 

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